研究内容

私たちの研究室では、適応行動の脳メカニズムとその計算論的原理の解明に向けて研究を進めています。特に、人間や動物のしなやかな知能・行動の根幹を成す「意思決定と学習」と、日常生活を送る上でもっとも重要な「社会知性」に注目しています。「脳機能を実現するのは脳の計算、つまり情報処理である」というのが私たちの基本的な考え方です。研究では実験と理論の両面を並行して進め、両者を協同・融合させた研究も行っています。実験面では「ヒトfMRI」に、理論面では「脳計算モデル」や脳の理解と応用に資する脳数理や脳型知能の研究そして脳データの解析技術の開発に取り組んでいます。

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REWARD-BASED LEARNING AND DECISION-MAKING

研究内容「意思決定」のイメージ画像

意思決定は適応行動の根幹を成すものです。適応行動には、報酬への期待を土台にした意思決定および過去の経験からの学習が不可欠です。この報酬をもとにする学習と意思決定、その脳メカニズムと脳計算を明らかにしたいと思っています。そのために、強化学習などの脳計算論の研究、その発展としてたとえば情動と感情、推論と計画などをも含む脳意思決定と学習の研究、それらの脳計算論と心理実験・fMRI脳活動計測などの実験を組み合わせた研究を進めています。

SOCIAL LEARNING AND DECISION-MAKING

研究内容「社会行動」のイメージ画像

日常生活の大半を占める社会行動を理解することは、とりもなおさず「ヒト」を理解することです。社会行動は、他者の心や行動を推断できる社会知性の脳機能に支えられています。長年の人文科学の研究あるいは近年の社会脳科学・神経経済学などの領域での社会知性解明に向けた研究がありますが、その脳メカニズムである情報処理、すなわち脳計算にまで深く切り込んだ研究はいまだ数少ないのが現状です。私たちは、社会知性の脳計算論、いわば「心の脳計算論」を打ち立てるべく、主に社会的意思決定について、ヒトfMRI実験と脳計算論の協同・融合に重点を置きながら研究を進めています。

NEURAL CODING AND THEORETICAL METHODOLOGIES

研究内容「ビッグデータ」のイメージ画像

実験計測技術の発展により、脳科学も「ビッグデータ」および「データ中心科学」の側面が拡大しつつあります。私たちは、データから情報を十分に引きだすデータ解析手法の開発と、その脳情報からより詳細に脳計算を読みとる脳解読技術を発展させたいと考えています。さらに、それらの技術開発が本質的かつ新たな問いかけに応えるものであることを心がけています。脳ビッグデータ一般に興味を持つとともに、特にヒトfMRIデータ解析で展開させることに留意しています。

NEURAL COMPUTATION

研究内容「アルゴリズム」のイメージ画像

脳は驚くべき情報処理を適応的に行っています。高次元かつ大規模な情報(ビッグデータ)を瞬時かつ柔軟に処理し、さまざまな機能を実現しています。それらは、新たな効率計算・学習理論のヒントの宝庫です。私たちは、脳情報処理と脳計算の原理、そのアルゴリズムの解明、そして新たな学習理論や脳型人工知能の開発へと研究を発展させたいと考えています。具体的には、強化学習と表現学習(教師なし学習、ディープ・ラーニングなど)、強化学習と構造学習(感情・計画・推論など)、高次特徴と効率計算(パターン認識と言語・記号処理など)、情報幾何と学習理論に興味をもっています。また、大脳皮質や大脳基底核回路での効率的な推論と学習(ベイズ推論(近似)など)のアルゴリズムの解明などにも興味を持っています。

参考:HUMAN fMRI

ヒトfMRI実験では、理論と協同あるいは融合させた研究を推進しています。これには、たとえば、モデル化解析と呼ばれる手法を用いています。計算論的モデル(例:強化学習アルゴリズム)を用いることで、異なる仮説における脳計算プロセスとその行動予測を詳細に記述することができます。各仮説の行動予測を行動データと比較することで、最適な仮説が導かれます。一方で、最適な仮説に対応する脳計算プロセスをfMRIから得られた脳活動(BOLD signals)記録と比較することで、その脳活動が実際に存在するかどうかを脳計算から同定することできます。この「モデル化解析」のアプローチは、既存のアプローチに比べて、行動と脳計算のプロセスをより精確に対応づけることを可能にします。モデル化解析と脳解読(neural decoding)の組合せも成果が期待できます。実験は、fMRI測定支援ユニットをはじめとする、多くの素晴らしい共同研究者からの緊密な支援を得ながら進められます(たとえば、fMRI機器の操作は専門スタッフが行います)。

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